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二海人の低い声が胸に染みていく。
次々に湧いてくるあまい何かが溢れて、表面張力の限界を超え、一気に零れてしまいそうだ。
「ばか……っ 」
もう、泣いてしまいたい。どれだけ、人のことを泣かせば気が済むんだよ。
「ばかばかっ、ばか野郎っ!! 俺のこと好きとか言いながら、よくそんなこと出来たよなっ?!! 」
腕の中でもがけば、抗う体を宥めるように背中を撫で、額に口付ける。
「お前が好きだからだ 」
ハッとして顔を上げると、二海人が優しく真祝を見詰めている。誰もを魅了する力強い瞳の光は、今は柔らかく真祝だけに向けられている。
「お前のことが好きだから出来たんだよ。自分が信じたお前の幸せしか、俺には見えてなかった 」
ふ、うっ……と、歪んだ口唇から変な声が漏れ出た。
「俺の幸せは、ずっとお前と居ることだったのに 」
「そうだな 」
「本当に分かってるのかよ 」
今迄のことが今迄のことだけに、どうにも信用がならない。
今からでも、番の元へ戻りたいと言えば笑って許す気がするのだ、この男は。
そんなこと絶対にしないけれど。
「俺は今も昔もお前しか要らない。二海人しか、要らないよ? だから、もう、俺を他へやらないで。ポンコツの捨てられΩだけど、俺はお前だけのΩになりたい 」
「そういうことを言うな 」
何故か、二海人がムッとした様にそう言った。
「いつも俺のこと、馬鹿っていうくせに 」
「俺の馬鹿は、可愛いと同義語だからいいんだよ 」
可愛いは好きということ。さっき教えられたばかりだから、真祝は洟をすすりながら微笑った。
「でも、運命の番を選べなかったなんて、Ωとしてはやっぱりポンコツだよ 」
「じゃあ、俺達似た者同士だな 」
意味が分からなくて首を傾げたら、二海人も笑った。
「俺だってポンコツだよ。身の程知らずにもβの分際で、Ωのお前がずっとずっと欲しくて堪らなかったんだから 」
やっと、俺のモノになった……。
囁く声に、そんなの俺だってと思う。
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