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ぎゅっと抱き付けば抱き返してくれる力強い腕が、嬉しくて途轍も無く幸せだ。
二海人を想って泣いた日々を考えると、こんな日が訪れるなんて思ってもみなかった。
「 本当だな 」
すると、耳許で囁く艶めいた声が鼓膜に響く。真祝は擽ったさに肩を竦めた。
「何? 」
「……あー、三崎さん曰く、俺達には圧倒的にコミュニケーションが足りてないらしいぞ? 」
「みすずさん、そんなこと言ったの? 」
二海人が頷く。そして、わざとらしく真面目な声で言った。
「三崎さんの言う事ももっともだと思う。そこでだ、相互の信頼関係の構築と精神的な充足感の獲得がお互いの為に必要だと思うんだが、いいだろうか? 」
「しん……? じゅう、そく? 」
「まぁ、有り体に言えば、……抱くぞ、まほ 」
声音を変えた色を含んだ低音。ゾクリと下腹部の奥が絞られる様に切なくなる。
ダイレクトな言い方に簡単に反応する自分が恥ずかしくて、真祝は真っ赤になって俯いた。
「ばか、そんなこと宣言しなくても、お前は俺ん事いくらでも好きにしていいのに 」
「俺だって怖いんだよ。あの日のまほのことを思い出すと苦しくなる。大事にしたい、もう泣かせたくないんだ 」
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