小鳥の憂慮、或いは月の贖罪と錯誤。そして、あらゆる劣情。

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悔しくて枕を投げるが、二海人はそれをヒョイと軽く避けた。 「ばかっ!避けんな! 」 「酷いな、いきなり何だよ? 」 「この、体力お化けっ! 大体、何回ヤったと…… 」 言ってからハタと気付く。6回までは覚えてる、でもそれ以降は何が何だか分からなくなって記憶が曖昧だった。 『や、あ……っ、そんな奥、怖いっ 』 『怖い、だけ? 』 『だめっ、またくる……、これ以上したら、ぼく、壊れ……っ 』 『素直だね、いい子 』 『ばかっ、違うっ、はっ、あっ、あっ……』 途中、何度か意識を飛ばした。けれどその(つど)、それを上回る(つら)い位の快感に目覚めさせられた。 しかも、朦朧としながらとんでもないことも沢山言わされた気がする。 最中のことを思い出し、恥ずかしさに頬が熱くなった。 「人のこと、好き勝手して……っ! 」 「しょうがないだろ、嬉しくてはしゃいでたんだから諦めろ 」 「は? 」 二海人が部屋のドアに手を掛けながら、肩越しに振り返る。 「こちとら20年来の初恋ずっと(こじ)らせてんだ。……舐めんなよ? 」 片方だけ少し上げた口角。この上無く魅力的に微笑(わら)った男は、催促するインターフォンに「ハイハイ 」と言って後ろ手にドアを閉めて出ていった。 「え、嘘……?、え? 」 今、初恋って言った? 残された真祝は、ポテンともう1度ベッドに横たわる。 赤くなった顔が更に蒸気する。 「ヤバいよ、それ反則…… 」 本当は1回1回抱かれる(たび)幸せ過ぎて、触れられる(たび)嬉しくて、今、この瞬間で死んじゃってもいいと思ってた。
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