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まぁ、君の番、寝取って奪ったんだから恨まれてもしょうがねぇよ ーーーと嘯く二海人に央翔が俯いた。そんな言い方をする理由に、央翔が気付かない訳がない。責任は全部自分にあると言っているのだ。真祝は何も悪く無いのだと。
金色に近い茶色の髪が落ちて、華やかな顔立ちに陰を落とす。
「さっきはすみませんでした。真祝さんが身籠っていると聞いて、頭に血が上ぼりました。どこかであれは間違いだったと、アクシデントだったのだとまだ思いたかったのかも知れない。俺とあの人は既に終わっているのに 」
そう言うと央翔は、自分の髪と同じ色のシャンパンを一気に煽った。
「……そもそも始まってさえもいなかった。あの人にはほんの少しでも、俺に対する想いはあったんだろうか? 」
それを見た二海人も、自分のシャンパンを飲み干す。そして、言った。
「あったと思うよ。アイツはあの日、君から貰った指輪を外さなかった 」
央翔がビクリと身体を揺らす。
あの日がいつを指すのかは、容易に想像がついた。
愛する番を、永遠に失った日。あの日しか考えられない。
「それなら尚更どうして突然あんなことになったのか、俺には今でもさっぱり分かりません。昼間に真祝さんに会っていた妹の話を聞きましたが、途中から様子が変だったらしいことは分かっても、それ以上のことは分かりませんでした。」
チラリと視線をやっても、二海人は黙っている。
央翔は思う。あの人が覚悟もなくプロポーズを受けることはない。嵐柴 二海人への想いを断ち切って、自分と生きていくことを選んでくれた筈だった。それを覆してまで、この男の元へと走った理由。
この男は全部を知っている筈だ。なのに、央翔が知りたがっていると知りつつ、沈黙している。
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