月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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「……挿れねぇよ」 混濁する思考は、一瞬その言葉を理解出来なかった。 イレネェヨーーー。 頭の中で、言葉がゆっくりと形を作る。 「な、……んでぇ……? 」 こんなに欲しくて堪らないのに、二海人だってΩの熱にあてられて苦しい筈なのに。 この期に及んでこんなことを言う二海人が恨めしくなる。 「ぼ、僕、そんなに、魅力ない? フェロモン、出てても、二海人が、抱きたいって、思えない、くらい、……魅力、ない? 」 喉の奥が痛くて、涙ぐんだ声がぶつぶつと切れてしまう。 視界が滲んで二海人の顔がよく見えない。 目を凝らそうと思ったら、頬にぬくもりを感じた。 「……んな訳、あるか。お前のこと、可愛いと思わない奴なんていねぇよ 」 「じゃあ、そんなこと、言わないで……よ。 」 温かい手の平に、すりすりと頬を寄せる。 「言った、じゃん。何度でも、達かせてくれる……って。楽に、してくれるって……」 「駄目だ」 バッサリと切られて、ずっと我慢していた涙腺が一気に崩壊した。 自分の顔が普通よりも多少整っていることなんて、色んな人から言われるから分かってる。だけど、他の人がそう思っても二海人は思えないってことなんでしょう? 「あぁ、そんなに泣くな 」 困ったようにそう言うと、二海人が指先で宥めるように涙を拭う。
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