月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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********** 初めて、二海人とセックスするようになってから半年が経つ。 いや、あれをセックスと言うのだろうか……。 あれから発情期は3度来たけれど、二海人は絶対に最後までしようとはしない。奉仕もさせない。 ただ、一方的に真祝を達かせるだけだ。 優しく、丁寧に。もしかしたら、愛されているのかと、勘違いしたくなる程に。 だけど、勘違い出来ないのは、どんなに懇願しても挿入を伴うセックスをしてくれないからだ。「好き」の言葉にも、曖昧に微笑うだけ。 ボトムの上からでも分かるくらいに欲望を張らせているくせに。 澄んだ黒い瞳には、狂おしい炎を揺らめかせているくせに。 こっちはいいって言ってるのに、何をそうまでして我慢するのかが分からない。 発情期のΩを前にしたら、他の男であれば、αだろうとβだろうと、きっと騙してだって突っ込もうとする筈だ。 つり革に掴まり、揺られながら、真祝は、はぁ……とため息を吐く。 ……責任取れなんて、言ってないのにな。 本当は分かってる。 発情期で苦しんでる“トモダチ”を見過ごせなくなったけれど、想いには応えられないから。 お堅い男の仁義ってヤツだ。
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