月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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「うん、そうだよ。だから、心配しなくていいよ 」 安心させるように微笑むと、女の子がやっと頷いてくれた。 ******** 次の駅で急いで降りると、真祝は女の子を抱えるようにしながら駅員を呼んだ。 大体の駅には、いきなり発情期になったΩを隔離するための個室が設けられているからだ。 場所は聞いたが、真祝は案内してくれるというホームに居た駅員の申し出を丁重に断った。 駅員といえども、発情期のΩの前では信用が出来ない。 これは、理屈や理性だけの問題ではない。 どんなに立派な人物でも、ピークのΩの発情には抗えないこともあるのだ。 例えば、信頼していた教師でさえも……。 嫌な記憶が脳裏に蘇り、ゾクリと体が震えた。 真祝は、振り払うように頭を振る。 匂いが強くなる前に、早く安全な所へこの子を連れて行かなければならない。
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