月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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それは、真祝には誉め言葉にはならない。 Ωということに輪を掛けて、この容姿のせいで嫌な思いも沢山してきたからだ。 女の子に悪気はないと分かってはいても、どうしても心がささくれ立ってしまう。 「もしかして、《 男Ω 》見るの、初めて? 」 「え…… 」 「別に、男なのに可哀想なんて思ってくれなくていい。 男だって女だって、ΩはΩ、一緒だ。 君も、性の対象として狙われる危機感をもっと持った方がいいよ。番を持ってないΩが発情期の時に外を歩くのは、裸で歩いてるのと同じなんだから。 」 だからって、こっちから言わせると、襲っていい理由にはならないが。 「……?! ご、ごめんなさい 」 真祝のトーンを落とした声に、女の子も自分が失礼なことを言ったことに気付いたのか、慌てて謝ってきた。 我ながら大人気ないとは思った真祝は、自分を落ち着かせるために大きく息を吐く。 「……いいから、早くそれ飲みなよ。 その薬は副作用が少ない方だし、体に合う合わないよりも、とにかくそのフェロモン抑えないことにはここから出ることも出来ない 」 渡したのは、抑制剤としてはオーソドックスで誰もが知っている薬だ。見知らぬ男から渡されたものでも安心出来るだろう。 女の子は頷き、急いでペットボトルの蓋を開けると震える手で薬を口に入れた。
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