月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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「おまえのおや、"おめが" なんだって? 」 学校からの帰り道。 何故かいつも絡んでくる子達が、あの日は特に酷かった。 「しってるか? おめがは"いんらん" なんだぞ? ママたちがゆってた! 」 その時の真祝は、幼すぎて《淫乱 》の意味が理解出来なかった。 きっと、口さがない大人の言葉を真似ただけで、言った本人も分かっていなかったと思う。 だけど、真祝には許せなかった。 誰よりも大好きで、優しくて、儚げな美しさを持つ自慢の母を貶める言葉だということは理解出来たからだ。 「ちがう! ぼくのおかあさんはオメガだけど、そんなんじゃない!! 」 「なんだよ! うちのママが、うそゆってるっていうのか?! おまえのママは “いんらん” の ”あいじん“ で、”つがい“ だったおまえのパパから ”すてられた“ んだろ! 」 「……っ!? ちがっ…… 」 しかし、それには違うと最後まで言い返せなかった。 真祝は物心付いた時から父というものを知らなかったからだ。 知ってるのは、母が話してくれる、亡くなったという父の綺麗な思い出の中の姿だけ。 言葉の詰まった真祝に優位を感じたのか、相手は更に真祝を傷付ける言葉をぶつけてくる。
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