月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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歳の割りに、低く落ち着いた声。 それは、教室でいつも、真祝がうっとりと聞き惚れている、利発そうな、柔らかで自信に満ちた声と同じだった。 「あれ……? 」 ここに居る誰よりも、頭一つ抜きん出た高い背。 短めに切られた、艶のある黒髪。 顔を上げれば、足を止めているのは、やはり真祝の密かに憧れているクラスの委員長の 嵐柴(あらしば) 二海人(ふみと)で。 ずっ……と啜った鼻に、二海人が切れ長の瞳を大きく見開く。 「ないてるのか? 」 大丈夫?と優しく聞かれて、我慢していた涙が頬を伝う。 「ないてなんか…… 」 「ないてんじゃん 」 小さく落ちるため息に、呆れられたと思った。 憧れていたクラスの委員長から、男のくせに簡単に泣く情けない奴だと思われてしまったかもと思うと、余計に涙が溢れてくる。 「おまえら、いじめたのか? 」 「……っ?! い、いじめてなんか……っ 」 焦って言い訳しようとするいじめっ子達に、「まぁ、わかるけどさ」と二海人が笑った。
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