月夜の小鳥は哀切な嘘をつく。1

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「ばっかだなぁ、だったらやさしくしてあげなきゃ。 すきなコには、じぶんのこと、すきになってほしいだろ? 」 「うっ、うるさいっ! ぼくが、こんなやつのこと、すきなもんかっ!! 」  けれど、真っ赤な顔で言われても、説得力はない。 二海人の言っていることは本当だと肯定しているようで、真祝はもうこの苛めっ子が怖くなくなっていた。 それよりも……。 「わかった。 じゃあ、オレが 『ゆずい』となかよくするよ。 」 とくとくと速くなっていた心臓が、一際、ドキンと跳ね上がる。  「いいよな? ゆずい。 」 「え……、あ、うん 」 こくこくと頷けば、二海人がにっこりと、とても魅力的な笑顔で真祝に笑い掛けてきた。そして勝負に勝ったかように、苛めっ子達を見回す。 「うらやましいだろ、おまえら 」 「……っ! うらやましくなんか……っ 」 しかし、四宮というらしい子は 「ない 」という言葉を続けなかった。 忌々し気に二海人を睨むと、そのまま何も言わずに背を向けて逃げるように行ってしまう。 他の子達も、四宮と二海人を何度も見比べた後、どんどん歩いていってしまう四宮の後を慌てて追い掛けて行った。 「あーあ、いっちゃったね」 
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