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「なにあなた、凌一にまだお茶も飲ませてないの?」
姑はそう言うと夫の部屋に向かう。
だが直ぐに戻ってくると私にお茶をもって行くようにと命じた。
私は夫に言われたとおり、ひびの入った茶碗にお茶を注ぐ。
新聞を持って夫の部屋に入った。
「由美ちゃん、障子、閉めて」
夫は私を傍に呼ぶと、ベットの下に新聞を敷き詰めた。
少しだけお茶を飲むと、私の耳を両手で塞ぐ。
私の頭を自分の胸に付けると大声で怒鳴った。
「熱い!
火傷させるつもりか!
何をやらせてもまともに出来ない。
お前なんか嫁にするんじゃなかった!」
そう言うと私を覗いて笑う。
ひびの入った茶碗を思い切り床に叩きつけた。
湯のみ茶碗の破片が飛び散る。
(大丈夫?怪我してない?)
小声でそう聞いて私の顔を見つめる。
私が頷くとベットに抱き上げた。
「ごめん、でもこれで母さんの風当たりも暫くは納まるはずだ。
無理に嫁にと来させたのにこんな事しかしてやれない」
そう言って私の髪をなでた。
「平気、凌さんの傍にいられたらそれで幸せ」
私はそう言って夫に甘えた。
さっきの湯飲みの破片を新聞紙ごと片付けていると夫が声をかける。
「今日は早めに部屋に戻っておいで、久しぶりに勉強を見てあげよう」
「大丈夫?苦しくない?」
「大丈夫だ、今日は気分も良い・・」
その頃になると、私達は何年も恋愛をした恋人同士のようにお互いを思い合っていた。
その夜、食事が済むと夫が大声で私を呼んだ。
姑は顔を顰めてため息を吐いた。
「病気のせいかしらねェ急に気難しくなって・・
貴女も大変ね、でも凌一には貴女だけなんだから辛いからとお里に帰ったりしないでね」
姑は哀れむように私にそう言うと、早く行きなさいと私を急かせた。
私は夫の待つ部屋に急いだ。
「障子閉めて・・」
夫はそう言うとまた、怒鳴るマネをする。
「由美子、何故直ぐに来ないんだ。
僕が呼んだら直ぐに来るのがお前の仕事だろ!」
そういってから積んであった本を蹴飛ばした。
大きな音がする。
「凌一、どうしたんだい?」
姑が部屋のそとから声を掛けた。
「煩い、黙れ!
言い訳なんていい!」
また怒鳴るフリをする。
直ぐに姑の足音が遠ざかった。
「もういいかな・・?」
夫が廊下を伺う。
二人きりなのを確かめると私を傍に呼んだ。
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