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気が付くと長い列に並んでいた。
真っ白な長い廊下を大勢の人がゆっくりと歩く。
皆何も言わず静かに前だけの見ている。
(此処は何処だ・・
何故誰も何も言わずこんな長い列に並ぶ・・)
そう思っていると急に前方に沢山のカウンターが見えた。
「次の方、利き腕の手首を出して下さいね」
直ぐ前の人がカウンターの女性にそう言われ袖を捲る。
手首にスキャナーのようなモノを当てられ、女性の後ろの扉に振り分けられているようだ・・
(次は僕の番か・・)
そう思って袖を捲る。
「次の方・・
あら貴方、何故こんな所に?」
女性は慌ててカウンターの後ろに声を掛けた。
「誰か手の空いてる娘・・
居るわけ無いわね・・
いいわ、貴方其処で暫く待ってて」
そう言うと僕をカウンターの前から少し遠ざける。
「次の方・・利き腕を・・」
僕が列を離れると、また次々に同じ作業が繰り返された。
どれ位経ったのだろう・・
さっきまで大勢並んでいた人達が皆其々に扉に消えた後、女性が僕に声を掛けた。
「貴方、コードネームは?」
(コードネーム?)
女性は戸惑う僕の様子にため息を吐くと僕の首の後ろを覗く。
「なんだ新入り?
それじゃ仕方ないわね・・」
あきれ顔で僕を見る。
「あっ、こんな所にいたのか?探したよ」
何時の間に現れたのか男性が後ろから僕と女性に声を掛けた。
「ちょっと貴方、この人新しい子じゃない。
迷子だなんて、ちゃんと管理しなさいよね。
貴方の所この頃トラブル続きじゃない、大体ゲートのくせに」
「分かった々、それ以上言うな、こいつ驚いてるじゃないか。
君達と違って僕達は此処で生まれた訳じゃないんだ。
色々あるんだ、心の残っているやつもいるのさ」
「なによそれ!
私達には心が無いって言いたいわけ?」
男性が僕を横目で見た。
「いや、そんな心算じゃ・・ごめん・・」
女性にそう言うとポケットから小さなガラスの小瓶を出した。
「これ、この間の仕事で貰ったものだ・・
どうせ1個じゃ役にはたたないけど良かったらあげるよ」
女性は周りを見回してから、隠れるようにその小瓶を受け取った。
「いいの?
私が貰っても」
「ああいいよ・・
明後日には他の仕事に行くからね。
でも他の娘には秘密だよ」
「わかってる。
ありがとう・・
実はね、私あと少しなの此処に居られるの」
「そうなんだおめでとう。
いよいよだね・・
君の時は僕が迎えに行ってあげるよ」
女性は笑いながら彼を見る。
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