第19章「ムッシュ・ガリッグの体験談」

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それはもう敵地をうばって前線基地を建設するような勢いだ。  ワシなんか、マネージャーというより特殊部隊の隊長になった気分でよ、こう腕をあちこちに振って指図したものさ。  諸君、ここからがすごいんだな?。  ある現場ではな、すぐ近くに凶暴な原住民がいたんだ。その部族はなんと人間狩りをする。しかも芸術的なんだ、これが。  彼らは鉄条網を張り巡らした柵の外に、じっと待ち構えている。白人が柵に近づくと、毒のついた吹き矢を 「フッ」 とあびせて1発でしとめる。その毒が強力なやつでさ、チクリときたらすぐコロリと死んでしまうんだ。  柵の中では、死体の処理に困るだろ。暑いからどんどん腐ってくるし。結局柵の外に放り出すのさ。  すると原住民は 「待ってました!」 とばかりに、その首を切る。  彼ら独特の伝統のやりかたで死体を処理して、リンゴほどの大きさに小さく小さく縮める。  あとは市場におろすのさ。白人の首はとくに高く売れるからな。だから彼らのおもな収入源になっているんだ。  ただそれを知った会社は 「従業員の首が市場に出回るのは困る。あとあと問題になる」 と、社員が市場に捜しにいって首を買い戻したそうだ。  第2話「アフリカの魔術師」  アフリカの少数民族の中にはな、いまだに酋長と魔術師が村を統治しているところがあるんだ。  でだな、ある時白人の一隊が村に立ち寄ったのさ。  その白人のひとりが、現地の娘に無礼を働いた。ま、無礼といっても、なあに少しからかって体をさわったくらいだけどな。  それがたまたま魔術師の逆鱗(げきりん)にふれたのさ。 「お前の右手は使えなくなる」 といって、そいつの右手を軽くさわったんだ。本当にほんの一瞬さわっただけ。    白人は小馬鹿にしていた。 「どうせ魔術師なんて、まがいもんだ。たわごとをとなえて、さわったくらいでどうなるもんか」  そしたらよ、その明くる日から右手がまったく上がらなくなった。何日たっても、元に戻りそうにない。  あちこちの医者や大学病院にもいってみたらしい。  ところがレントゲンを撮ろうが精密検査をしようが、原因がわからない。悪い所が全然見つからないんだ。薬を飲もうにも処方せんがない。針治療をやったが、一向によくならない。 さすがにあせったねえ。  最後に残された方法は、これしかなかった。  
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