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第27章「モロッコ入国できず(後編)」
その1「最後の試み」
翌日、午前6時00分。
今朝は早く起きた。気合いが入っている。ホテルの朝食を食べ終わると、荷物を車に積んだ。冷凍庫と冷蔵庫から、豚肉とハムを取り出すことも忘れない。
フロントで勘定を済ませると、ガレージへ。
愛車には4日ほど前に乗ったばかりなのに、ずいぶん久しぶりな気がした。
「いよいよ最後の国境越えだ」
ハンドルを握る手が汗ばんでくる。国境を目指して急いだ。
午前8時16分。
入国管理事務所の前は、相変わらず旅行者でごった返していた。よく見ると、旅行者でも、事務所の人間でもなさそうな一団が、ウロウロしている。荷物はもっていないし、制服も着ていない。
ぼくは旅行者のひとりに聞いてみた。
「あの人たちは何ですか?」
「ありゃ、入国手続きを手伝う業者だよ。業者といっても、実態は観光客相手の便利屋だがね。あんたも慣れてないなら、自分で手続きするより彼らを使ったほうがうまくいくよ」
こりゃしめたものだと思い、さっそくひとりに手続きを頼んだ。何とか最初のステップは越えた。
午前9時13分。
係官がやってきた。
「荷物を調べるからもってこい」
「車一杯の荷物をどうやって?」
と、思わず口に出かかった。しかしここで反論しようものなら、またどんな意地悪をされるかわからない。
午前9時50分。
まずは本を詰めた箱を2、3個もっていった。
係官は本をざっと見た。
「他は? 次もってこい」
なんだかつまらなそうだ。
「そうか、彼らの興味のなさそうな物を見せればいいんだ」
カセットデッキや電化製品は後回し。衣類の入った箱を運ぶことにした。
午前10時21分。
案の定、係官はひどくつまらなそうだ。そりゃ、箱にぎっしり詰まった男の下着を見て、楽しいわけがない。
「もういい」
半分ほど調べたところで、ぼくは係官から解放された。
意外にあっけなかったので拍子抜けした。しかし、いつ彼らの気が変わるかわからない。早々に荷物を積み直し、その場をあとにした。
午前11時00分。
無事国境を通過。
だが安心してはいられない。次の難題が待っている。
モロッコを600キロ横断し、その日のうちにアルジェリアに入国しなければならない。そうしないと、ビザの期限が切れてしまう。
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