0人が本棚に入れています
本棚に追加
わずか5分でウジュダを通過、あとは国境に向かって突っ走るだけだ。
午後10時44分。
近いといっても国境へは、さらに2時間かかった。
夜中にやっとアルジェリアの国境にたどり着く。
そこにはそれぞれの国の警備兵がいて、入国管理事務所があった。その間は数百メートル離れていて、緩衝地帯となっている。国境という長い帯の両側に、兵隊と建物が存在するわけだ。
この間にも1時間の時差がある。つまりモロッコでは午後11時前でも、アルジェリアではもうすぐ午前零時というわけだ。
「早く、早く…」
と心の中ではあせりながらも、表情には出さずモロッコでの出国審査を終える。
午後10時52分。
通行ゲートから緩衝地帯へ。
まだここで、あわててはいけない。もし急発進でもしたら、たちまち疑われる。ややゆっくりめの速度で車を走らせる。
午後10時57分。
ようやくアルジェリア側に着いた。こちらでは、ほとんど12時。ようやく間に合った。
だけど、まだ難関は残っている。
アルジェリアの税関だ。ここは、今まで何度となく通った。しかし今回は、いつもと違う。車一杯の荷物がある。大型のラジカセやポケットコンピューターもある。しかも、それぞれ2台ずつ。
「問題にならなければ、いいが……」
この数日間さんざんイヤな目にあったので、作戦をふたつ立てることにした。うまく隠す作戦か、係官を懐柔する作戦だ。
まずはモロッコで使った、大事な物はうまく隠す作戦を実行する。
最初は本の詰まった箱を、係官に見せる。商売や密輸をするたぐいの人間でないことをアピールした。真面目な正直者と思わせる。
「次もってこい」
今度は、日用品雑貨や衣類だ。
「次は何だ?」
係官は少々うんざりしている。真夜中だし、集中力が落ちてきているようだ。
ここでラジカセの出番だ。
といっても、そのまま丸ごと見せるわけにはいかない。幸いにもこのラジカセは、2台とも本体とスピーカーが分離するタイプ。別々に見せていく。
タイミングもずらして間に普通の荷物もはさんで見せる。係官は普通の機械の一部品とでも勘違いしたのか、興味を抱かなかった。
さらにポケットコンピューターも、うまく通過させた。
いくつもの段ボール箱や、数多くの荷物の中に混じらせる。バラバラに入れて隠したので、係官は気づかない。
最初のコメントを投稿しよう!