生はまこと雨後に尽きる

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  「僕のところに来てくれたなら、 止まりそうなんですが。 ……溜め息」 「ずいぶんわがままですね。 人を置き去りにしておいて」 「……」 「クリスマスが過ぎたら、 またぱったり 音沙汰なくなりそうなんですけど」 「……」 図星か。 吹き出して、 声を上げて 笑ってしまいそうになった。 「私、 そんなに都合のいい 女じゃないんですが」 「……わかってます」 「でも、いいですよ」 「……!」 「夕食は、 親友といっしょに 行きたいんです。 桃也さんはそこにやってきて、 親友の許可を取ってください。 そうしたら一晩くらい、 いっしょにいてあげます」 「親友って、 あなたの? ……怒られそうだ」 「それくらいしてください。 私も、彼女を ひとりにするんですから」 まいったな、と 桃さまは肩をすくめて笑う。 けれど、 わかりましたとうなずいた。 今気づいたけど、 車内がとってもあたたかい。 さっきの夜道とは 大違いだ。 この人は、 きっと私の人生に 責任を取ろうとはしないのだろう。 でも、 思ってから私も 同じだと気づいた。 桃さまも、私も、 いつまた別の人が 現れるかわからない。 でも今いっしょに いたいのは、 この人。 けれどそれは、 世の中のわかりやすい 約束なんかじゃ もたない関係で。 なら、 互いの気が済むまで この付かず離れずを 楽しんでもいいんじゃないだろうか。 いつか私たちが、 本当の意味で すべてに納得ができる、 その日まで。 fin. .
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