僕が君に触れるとき

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「それで、あなたはいつ私の命を終わりにしてくれるのかしら?」 「美湖」  僕は言った。 「今日、僕はこの部屋に入ろうと思う」  美湖の瞳は、大きく開かれた。 「あら、ついに私を殺してくれる気になったのかしら?」  ガラスの壁まで来た美湖は、僕のことを見つめてそう言った。  少なからず、彼女は動揺しているようだった。僕はこの15年間、頑なに美湖を殺すことを拒んできたから、きっと美湖は僕が美湖の命を終わらせるようなことをするはずがないと思い始めていたんだと思う。  僕は、決心したのだ。この状況を終わらせることに。 「もう、終わりにしよう」 「やっと触れてくれると思うと、嬉しいわ」  美湖は瞳に涙を浮かべていた。それが悲しさからくるのか、嬉しさからくるのかはわからない。 「あなたは最期に何か私にいうことはないのかしら」 「それは君に直接会ってから言うよ」  僕は、持ってきていた彼女の部屋の鍵を持って、ドアノブの鍵穴に差し込んだ。鍵を回すと、ガチャリと音を立てた。  ドアを開ける前に、彼女の方を見た。彼女はやっぱり、美しかった。
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