僕が君に触れるとき

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***  美湖と僕は、高校生になった。僕は中学、高校とかなり勉強して、やっとこさ美湖と同じ学校に入った。高校生になった美湖はやっぱり綺麗で、触ったら割れてしまいそうな儚さも持ち合わせていて、ますます魅力的になっていた。  そんな美湖を狙う輩はたくさんいたのだけれど、どの人にも美湖は興味すら示さなかった。そんな美湖と話をするのは僕だけで、いつも僕は美湖の隣を独占していた。美湖の世界の住人は、美湖と僕。それだけで十分だった。  美湖は昔から体調を崩しやすかった。今思えば、小学校の時に外で遊んでいなかったのも身体が弱かったせいなのかもしれない。  そして高校二年生の夏、美湖は大きな病気になってしまった。だから美湖は今、ガラス越しの真っ白で無機質な部屋に一人きりでいるのだ。  ベッドで半身を起こして文庫本を読む彼女は、今にも消えてしまいそうな線香花火のような儚さを僕に思わせる。 「美湖、来たよ」 「あら、毎日ご苦労様」  僕がガラスの前に来て話をするために壁に設置してある電話を取ると、美湖は僕の方をちらりと見て、また文庫本に視線を戻した。
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