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この日を境に、僕と美湖の一進一退の攻防戦が始まった。美湖は僕を部屋に入れさせようとあの手この手を駆使してくるようになったのだ。
美湖は、ただ小説を読んで一日を過ごしていたころよりも、僕をどうやって部屋に招き入れるかを考えながら時間を過ごせる今の方が楽しいと言っていた。
「美湖、好きだよ」
「あなたにはバリエーションというものがないのかしら? ちょっと恋愛小説でも読んだ方がいいんじゃない? 結構参考になると思うけど」
今日彼女が読んでいたのは、今流行りの純愛モノのネット小説の文庫版だった。誰が美湖に渡したのかは知らないが、美湖がこの手の本を読んでいるのを見たのは初めてだった。
「美湖は僕のことが好きなの?」
「さあ? それを確かめるには私を抱きしめて私の心拍数を図ることね」
「……好きな人が近くにいて話しかけているのに、美湖の心拍数はいつも通りみたいだけど」
壁に着けられているモニターに映し出されているのは、一定の感覚で美湖の心臓が動いていることを示すもの。
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