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しゃべる動物、流行ってるんだろうか。 夜魅の尻尾が2本に見え始めた辺りから、妙に肝が据わってきた。 柊平は夜魅と一緒に、白い犬の後をついて夜の坂道を登る。 左手には、夜魅と白い犬に言われて、撫で斬りを持っている。 時刻は既に深夜に達しており、不審者と言われれば逃げ場はない。 日本刀を持った高校生男子。 やはり、逃げ場はない。 すぐそこだと犬は言ったが、せめて何か布でも巻いて来るんだったと柊平が後悔し始めた頃、犬は坂道の終わりにある空き地に入っていった。 夜魅はあまり乗り気ではなかった。 「壮大朗に、最初は簡単なやつって言われてるんだよ。」 と、柊平が白い犬についていくのを渋った。 ただ、その壮大朗には、依頼があれば赴くように。とも言われている。 結局のところ、そこで揉めていても埒があかないので、その常連さんに会うことにした。 その常連さんというのが、今、犬が入って行った空き地にいるらしい。 そこは祖父の店があるゆるい坂道を、少し上ったところにある。 柊平が物心付いた頃にはすでに空き地にだった。 背の低い雑草が少し生えているくらいの、砂っぽい乾いた場所だ。 錆びた細いチェーンで、申し訳程度に立ち入りを制限されている。 そのチェーンを跨いだ瞬間、柊平は目を疑った。 何も無いハズの空き地が、1面、真っ赤な彼岸花で埋め尽くされていたからだ。 「え?」 思わず声が出た。 チェーンを跨ぐまでは、いつもの何も無い空き地だった。 それが今は、血のように紅い紅い花が視界を被っている。 話の流れから考えて、何か起こっているのは明らかだ。 「柊平、彼岸花の別名って知ってる?」 夜魅が足元から静かに訊く。 「別名?」 名前に植物の名前が入っている柊平だが、植物には特に詳しくはない。 「狐花っていうのがあるんだよ。」 「狐?さっきの犬、狐なのか?」 「ううぅん。あいつはちがう。」 夜魅は、彼岸花畑を見渡している。 「コマ!悠真!」 夜魅が叫ぶと、さっきの犬が顔を出した。 「コマって?」 「あいつの名前。」 彼岸花の間から手招きしている犬を指し、夜魅が言う。 「こっちや!はよ!」 急かす犬を追って、柊平と夜魅は彼岸花の花畑に入って行った。
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