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昼も近くなった頃、柊平は起き出して片付けに取り掛かった。
「ところで、お前は何をしに行ったんだ?」
池に刺さったままの撫で斬りを抜きながら、今度は縁側で丸くなる夜魅に訊く。
昨夜の光は、今は見る影もない。
「百鬼の主が百鬼夜行路の門番なら、ボクは案内人だよ。」
うとうとしながら、夜魅は答える。
「案内人?」
「そう。百鬼夜行に合流できるように、お客さんを案内するんだ。いくら百鬼の主でも、人間が百鬼夜行路に入るのは安全とは言えないからね。」
ふーん。と柊平は池を覗く。
「百鬼夜行路っていうのは、百鬼夜行に行くための道ってことか。」
「そのとおり。迷子の妖怪をあるべき場所へ送り届ける道だよ。」
夜魅の声がだんだん小さくなる。
柊平が撫で斬りを持って縁側に戻ると、すっかり寝入ってしまっていた。
どうやって戻って来たのかとか、入口はどうなったのかとか、訊きたいことはまだあったが、柊平はあきらめて片付けることにする。
濡れた撫で斬りの鞘を拭うと、柊平は菓子箱サイズの木箱を小脇に抱えた。
昨夜、モミジの木の揺れる様さえ不気味に感じた廊下を、迷いのない足取りで北棟へ歩いて行った。
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