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王の間を出たナオキは、ジーナの部屋へと向かった。
コンコン
ノックの音が響き、少しするとゆっくりと扉が開いた。
『ナオキ様…おはようございます』
顔を出したジーナがナオキに笑顔を向けた。だが、ナオキは視線を逸らした。その様子にジーナは何かを感じたのだろう…
『勇者様がたが、元の世界にお戻りになられたのですね…』
『はい…』
ジーナの表情が寂しさからか、陰りを帯びる。
『タカヒロ様が申されておりました。いずれ、この世界にいる彼らと必ずまた、会えると…』
『そうですか…』
ジーナの表情に変化はない。おそらく、彼女もマツが言っていたことと、同じ思いなのではないだろうか?
この世界にいる彼らは、勇者として異世界から来た彼らとは別人だと…いずれタカノリに出会えたとしても、彼にはジーナの記憶はない。彼女を守るためにオーガに立ち向かったことも、彼女との約束を守るために無茶をしたことも…知らぬことなのだ。
だが、ジーナは笑顔を作った。
『ナオキ様…、タカノリ様からあの子にリューセイという名前をつけていただきました。ナオキ様、ナオト様とも関わりのある名前だそうです』
『わたしとナオト様と…』
『はい、自分にとっても大切な名前だとおっしゃっておられました』
『そうですか…』
『はい。わたくしにはリューセイがいます。そしてリューセイのような、立派な神馬を育てなければなりません…お手伝いいただけますか?』
『もちろんです、わたしにできることがあれば、申しつけてください』
『ありがとうございます』
ナオキは彼女の強さに頭が下がる思いだった。タカノリとの別れが辛いはずなのに…彼女は気丈に自分の使命を果たそうとしている。
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