第一章

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『また、うまくかわされたなショーキチ』 『テツヤ…笑い事じゃねーよ。ジーナ様に何かあっては大変なことになるのだぞ』 ジーナの姿を見送ったショーキチにテツヤが声をかけた。 今テシ族の生き残りは彼女と彼女の祖母である長老だけ…万が一老齢の長老に何かあった場合、彼女はテシ族の使命を受け継ぐ次期長老という身だ。 『だが、今の平和な世で、彼女に手を出そうなどという輩はおるまい』 『ジーナ様は分かっておられぬ…彼女は美しく成長された…そのお姿だけでも、よからぬ者が寄ってくるきっかけになるかもしれぬということを…』 『確かに、見た目では気の強さなど分からぬからな…』 二人がそんな話をしていることなど気にも留めず、ジーナは部屋へと戻っていった。 『ジーナ…』 部屋に戻ったジーナに祖母が声をかけた。 『おばあちゃん、起きてて大丈夫なの?』 『そろそろ結婚を考えておくれ、お前はテシ族の生き残り、早く子を為しテシ族の血を残さねばならぬ…』 『またその話?私はまだ、そんなこと考えられないって言ってるじゃない…』 『ジーナ、どんなに待っても勇者様は戻っては来ないのですよ』 『分かってるわよ、あの方にはご自身の世界でやることがあるのだってことくらい…でも、今はまだ…』 祖母の言葉を否定はしないものの、彼女はタカノリのことを忘れることはできなかった。 『キングが退位されるかもしれぬ…新しいキングに献上する神馬はどうです?』
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