第6章「ふたたびアルジェリアへ」

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その3「ムッシュ・ガリッグ」    校庭に車を停めると、ぼくはセンター内の事務局に案内された。  部屋にはフランス人紳士が、立派な椅子に腰掛けている。  かっぷくのいい大ボスといったところか。ぼくを見るとすぐに立ち上がり、親しげに歓迎の握手をしてくれた。  彼の名はムッシュ・ガリッグ。  正確にはマックス・ガリッグという。今まで会ったフランス人と全然違う雰囲気があった。  開けっぴろげな、おおらかな態度。活動的な大きな声と、快活な話し方。そして相手を気遣う、旺盛なサービス精神。初対面、しかも長旅で疲れたぼくでも、数分でなごんでしまった。  会った早々、自分の経験と日本企業とのかとの関わりを語り始めた。いや語るというより、まくしたてる感じ。  ざっとこんな内容だ。  いろいろな国で、エンジニアやプロジェクトマネージャーとして活躍したこと。  フランス語や英語はもちろん、数カ国語をマスターしていること。  日本のエンジニアリング会社(工場建設の技術等をもった専門会社)と、あの現場で一緒だったこと。  ぼくが以前勤めていた会社の社員を、何人も知っていること。  途中で 「日本人ならこのほうがわかりやすいだろう」 と、フランス語から英語に切り替えた。  さらに話は続く。ぼくが以前中国に赴任していたことを伝えると、中国工場の技術的問題をズバリ指摘。これには驚いた。  彼の話しかたには訛(なまり)がある。  南仏出身者ではないかと予想し、ぼくはこうたずねた。 「ムッシュ・ガリッグ、ご出身はパリですか?」 「いや、トゥルーズ出身だ。南仏近くの」  やっぱり!   サービス精神旺盛なのと根っからのお喋りなので、そうじゃないかと思った。  昔南仏を訪ねたことがある。  あの地方の人は、こちらがひとこと話す間も勝手にしゃべり続ける。とどまることがない。  ベアルン地方、ガスコーニュ地方、そしてプロヴァンス地方の人は特にそうだ。一日中しゃべっている、そんな気質の人々だ。  ひとわたり自己紹介が済むと、職員室に案内された。  ムッシュ・ガリッグは、ぼくを他の先生たちに紹介した。  そこには10人ほどのフランス人講師がいた。  どの顔もひとくせありそうだ。中にひとり黒人がいた。興味深そうにこちらを見ている。みんな一応は笑顔で迎えてくれた。  これから上手くやっていけるか、不安がよぎった。
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