貴方と共に……(和風)

9/9
397人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
【金平糖】  久しぶりに食べたがこんなに甘いものだったのか。  大我の為にと買った金平糖。 「土佐様もお一つ」  と、一つ摘まんで口元へと差し出してきた。  随分と可愛い事をしてくれる。  大我とは恋仲になったのだが、それらしい雰囲気にもっていくには土佐の方から仕掛けねばならない。  主従関係であること、そして大我がそういう行為に慣れていない。  なので細やかな事であっても、彼からしてくれるのは嬉しいのだ。 「ん、あまいねぇ」  水を飲もうと台所へと向かおうとする土佐に、待ってくれと大我が腕をつかむ。 「どうした?」  何故、止められたのだろうと不思議そうに彼を見れば、唇に暖かいものが触れる。 「んっ」  目を見開き彼を見れば、そんな土佐に構うことなく大我の舌がはいりこむ。  歯列をたどり舌を絡ませ、土佐から甘い息が漏れる。  何時の間にかこんな口づけが出来るようになったのかと、そう思うと嬉しくなる。 「たいが」  このまま大我と蕩けあって絡み合いたい。  欲に溺れ、このまま彼を押し倒そうと肩を掴んだ、その時。 「甘いの、消えましたか?」  と、土佐を覗き込む大我の表情は何かを心配しているようだ。 (なんだ、そういう事か)  あの口づけは、甘い味を取りのぞこうとしていただけで、ちょっとずれた思考は大我らしい。  いまは違う甘さで支配されつつある口内。 「大我、まだ甘くて死にそう」 「え、本当ですか」  では、もう一度。  そう言って触れる唇に、うっとりと瞳を閉じた。 【金平糖・了】
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!