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俺は、人が苦手だ。誰と話をしてもまともに続けられず、気まずい沈黙を作ってしまう。だから、俺と友達になれた奴は、本当にレアだ。
明日になればまた新しい友達ができるかもしれない。明日こそ頑張ってクラスメートに話し掛けよう。毎日のようにそう思っていた。そんな中、何を言ってるんだと、心の中で叫んだ。
「それじゃあ、高校卒業まで、預かってちょうだいね。宜しくお願いします。」
黒く長い髪を風に靡かせながら、俺の両親の親友は海外出張することについての詳しい説明をしていた。
家の玄関先で繰り広げられる会話を、俺は居間の扉からこっそりと覗く。
『預かってちょうだい。』
両親の親友は確かにそう言った。
なんだろう……? 犬か猫か?
そう思っていると、両親の親友の女性は“預かってほしいもの”の名前を呼ぶ。
「心(しん)」
甲高い声の後に、「はーい!」と、明るいが低めの男声が聞こえた。
家の門の陰からスキップをする勢いで顔を出したのは、一言で言うとチャラい、がよく似合っている男だった。
俺がこの世で最も苦手とし、毛嫌いする人種の男だった。
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってよ……まさか、預かるって……人!?」
そいつを見た瞬間、無意識に顔を顰めてしまう。
髪の毛は赤く染めてあり、耳、首、指にはゴツいシルバーアクセサリーが飾ってある。
最悪すぎるだろ……。
「初めまして! 成沢心です! よろしくお願いします!」
彼は、俺の両親に元気よく頭を下げた。
なんだ、話しているところを見ると、結構いい奴そうじゃないか。そう思ったのも束の間。
彼の動作をじっと観察していると、頭を上げた瞬間、目が合った。バチッという電撃音が鳴ったと思う程に。そして彼は、ニヤリと笑った。まるで俺を前から知っているような、狙っていた獲物を仕留めたような顔してやがる。
冷や汗が額を流れると共に、俺は素早く目線を逸らし、隠れた。
ありえないんですけど! ありえないんですけど! あの謎の悪魔のような笑みはなんですか!?
その瞬間だった。
「四鷲ー!」
父さんが俺を呼んだ。
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