その日は突然やってくる。

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 人と接することが苦手で、自ら敬遠してきた人との関わり。特に初対面と、顔見知り程度の人との会話が一番苦手だって、俺は何度も何度も何度も、父さんと母さんに話していたはずなのに……。  ウッ、嫌すぎて、胃痛が……。  俺はそそくさとリビングに隠れた。 「あれ?四鷲!いないのかっ」  叫ぶ父さんの声に、しゃがみ込み、耳を塞いだ。  嫌だ嫌だ嫌だ! こんなやつと暮らすなんてありえない! 聞いてない! 「あ、お父さん、たぶん四鷲くん、そこの部屋に入っていきましたよ!」  嫌がる俺の心境を無視し、明るい声で心は言う。 「おお、ありがとう心くん。今連れてくるよ」  父さんの足音が徐々に近づく気配を感じると、目の前で止まった。 「四…」 「俺聞いてねぇよ!」  父さんが喋る前に、俺は叫んでいた。  そうだ、いつも父さんや母さんは、俺に何も教えてくれない。それに脳天気で楽天家で、何の計画も無しに物事を進める、行き当たりばったりな性格だ。ふざけるのもいい加減にしてほしい。 「あれ? そうだったっけ? この事は、もう一ヶ月も前に決まっていたんだぞ?」  何の悪気もなく言うから、腹の底から苛立っていても、本気で怒れない……。むしろ本気で怒っている自分が、バカみたいに思えてくるから不思議だ。だからいつも決まって呆れる。 「今言うなよ……」  だから、こんなマイペースな両親を持つ俺は、何かと損をしやすい性格に育ってしまった。 「まあ良いじゃないか! 今日は家族が増えるめでたい日なんだ! 心くんにちゃんと挨拶しなさい。」  にっこりと悪気なく微笑まれると、俺は深いため息を吐き、無言で玄関へと向かった。  こんなチャラい奴になら別に好かれなくても良い。関わるなんてこっちから願い下げだ。  今から自分がしようとしている行動と気持ちが矛盾していて、俺はなんだか泣きたい気持ちになっていた。  でも俺は真面目だから、親の言う事は聞く。 「初めまして。月島四鷲(よわし)、高二」  素っ気なかっただろうか。いや問題ない。これで良いのだ。ちゃんと仕事した。よし、安住の地、自室へと帰ろう。  踵を返したその時。 「よわし?」
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