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指だけにお手上げだった。その日は昼食を抜いた。
彼は1週間ほど滞在した。
翌日また別の料理を作った。
「きょうの料理は気にいってもらえるはずだ。さあ、どんどん遠慮しないで食べてくれ」
皿の中では、何かがシチューのように煮込まれている。 よく見ると、それは無数の毛虫だった。
おまけに、そのニオイといったら、もはや形容のしようがない。
ぼくは吐き気をこらえながら、テレーズにオムレツを作ってくれるように頼んだ。それがぼくの昼飯となった。
そうした材料は彼がわざわざベルギーの、いきつけの店でしこたま仕入れてきたという。ぼくはあ然とした。
「日本に中華街があるように、ベルギーにはザイール街でもあるのだろうか。日本人は中華料理を好むが、ベルギー人はこれが好きなんだろうか?」
自分の家に戻ると、少し冷静になった。
「もし日本人が梅干しをもってきたら、外国人はどんな対応をするだろう?」
そういえば第二次世界大戦後、米兵の捕りょは裁判でこう発言したという。
「日本人からひどい目にあった。木の根っこを食べさせられた」
調べてみると、それはきんぴらごぼうだった。
チンパンジーの指も無数の毛虫も、ザイールでは梅干しやきんぴらごぼうのようなものかもしれない。
「彼らの材料が、ぼくにとって少々ショッキングな物だっただけだ」
と思い直し、その日はすぐに寝た。
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