第13章「『ん』で始まる名前」

2/2
前へ
/33ページ
次へ
あのあと、お互い気まずいまま1日が過ぎた。ふたりの間だけではない。家庭全体が暗くなった。  そこでぼくは事態の収拾を計った。心の奥底では 「自分は悪くない」 と思いながらも、自ら進んで母に謝罪した……。  ん?  違う、違う。そうじゃない。 ついつい、自分の都合のいいように記憶を改ざんしてしまった。  真実はこうだ。  姉3人が、ぼくと母の間に立ってくれたんだ。 「リョウちゃん、ほんとはいい過ぎたと思っているんでしょ?」 「ほら、リョウイチも反省しているようだし」 「お母さん、許してあげて」  こうして何とか仲たがいは収まった。ぼくもンガンドウも同類の能天気。違ったのは、仲裁役がいたかどうかだけだった。  ちなみに『ん』で始まる名前は、彼の国では珍しくない。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加