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また読者の一部から、クスクス笑いが聞こえる……。
さて次は、印象深い講師たちについて1人ずつ紹介していこう。
その3「ムッシュ・カオー」
講師の中に唯一のベトナム人、ムッシュ・カオーがいた。彼はパリに15年以上住んでいた。それほどフランス滞在期間が長いのに、アクセントはベトナム語のままだった。
同僚のフランス人たちはため息まじりにこう嘆いた。
「アヒルが鳴いているようだ」
フランス人でさえ聞き取れない。
ましてぼくには
「クワッ、クワッ、クワッ、クワッ」
としか聞こえない。
ムッシュ・カオーはいつも疲れている。
1日の授業が終わると、かわいそうなほどヘトヘト、グッタリ状態。夕方のしおれた朝顔みたいだった。
みんなはその姿をからかい、こういった。
「ムッシュ・カオーは本当にカオー(※)だ」
(※混沌という意味のフランス語。英語のカオスに当たる。呆然とするほど疲れている意味もある)
結局彼は、ひと月ともたずに帰っていった。
その4「ジャン」
やってくるのは、ただの技師ばかりではない。
エンジニアやドクターという肩書きの者も何人かきた。
「ドクターはわかるけど、エンジニアは?」
なんて思ったアナタ。
確かに日本でエンジニアというと、工学系の大学を出て何年か経験を積んだ人間というイメージ。ちょうどぼくがそうだ。とくに国家試験を受かったわけではない。
しかしフランスでは、エンジニアを専門に養成する学校がある。そこを卒業した者は、一目置かれる。日本でなら医大を出たような扱いだ。医師や弁護士に次ぐステイタスらしい。
ただし、ここへきたエンジニアたちを見る限り、まともなのはムッシュ・ガリッグだけ。
あとはロクなヤツがいなかった。そういえば、母がこんなことをいってた。
「肩書きと映画の予告編は、信用してはいけない」
たとえば、このフランス人のジャンがそうだ。
彫りの深い美男子だから、女性によくモテる。
ぼくなら自国の女性を相手にするだけで十分だが、彼は飽き足らないらしい。世界中を放浪して回っている。
とくにインドがよかったらしい。付き合っているインド人女性の写真を何度も見せられた。インドとアフリカは、地球4分の1周くらい離れている。一体どうやって付き合っているんだろう?
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