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ある日、講師たちがガリッグ宅に呼ばれた。
何かのパーティーだった。誰もが、モーリスはさぞかししゃべるだろうと予想していた。ところが珍しいことに、黙ったまま皿に食べ物を盛っている。
「おいモーリス。今日はおとなしいな」
珍しく、ぼくのほうから話しかけた。
「風邪をひいたんだよ」
と、彼は小さなガラガラ声で答えた。
「へー、そうかい。てっきり毎日しゃべり過ぎて、とうとうのどを枯らしたのかと思ったよ」
一同爆笑。
モーリスはいい返すのも、つらいらしい。参ったという顔で、ぼくに握手を求めてきた。
その7「ベルギー人技師」
ある日、ぼくは教室から職員室に戻り、自分の席に座っていた。
すると後から大柄のベルギー人技師が入ってきた。きのう赴任したばかりの新入りだ。彼はぼくのイスを指さして、こういった。
「そこは俺の席だ」
「いや、ぼくの席だよ」
と答えると
「そうじゃない、そこは俺がいつも座っている!」
といい張り、イスを強引に取り上げた。
「冗談はやめてくれ!」
といってもムダ。彼は本気だった。とにかく力ずくで取られてしまった。自分の居場所が、いや全存在が否定されたような気がした。
このとき、久々に九州男児度が急激アップ1000%!
ぼくの心の阿蘇山はもちろん、雲仙岳、桜島、さらに富士山までもが噴火した!
彼はぼくの倍ぐらいの体格。しかしそんなことは気にならない。猛然とイスを奪還にいった。
この職員室の机の置きかたは、日本と同じだ。2列背中合わせで並べてある。島のような固まりになっている。それが3つ。廊下側から窓際へ並んでいる。
上から見たら、こんな図だ。
廊下側
□□□□□□□□□
□□□□□□□□□
□□□□□□□□□
□□□□□□□□□
↑→→→→→→→→→↓
◎□□□□□□□□□↓
■□□□□□□□□↓
←←←←←←←←↓
窓側
ぼくの机は、いちばん窓際の島。その島の角に当たる部分に席を確保していた。
ちょうど■に当たる。景色のいい場所だった。
今は、例のベルギー人講師が不法占拠している。
ぼくは体を低く構えて、歩き始めた。
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