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「あ、こら。人のを勝手に!」
「お弁当とか作んないの?ひょっとしたら料理苦手?」
最近の子は敬語を知らないのかしら、と思う反面、さほど嫌だとは感じないから何だか不思議で、
「料理くらい出来るし!今日は初日だったしバタついてたから」
つい私も友達とお喋りする感覚で返事を返してしまう。
「センセーと同じくらいの女の先生だったよ、前のヤツ」
言いながらぺリリ……とサンドイッチの封を開けた。
それ私のだけど食べるの?というよりも、あー左利きなんだなとか、意外に深爪なんだなとか、そんなところに目がいってしまって、
「はい、半分こね」
私が買ったサンドイッチなのに、
「うん、ありがとう」
と、思わず言ってしまう。
「同じことを聞いたんだよ」
「同じこと、って?」
サンドイッチを頬張りながら、“発音記号”とだけ言って、いつの間にか私のラテまでもチューっと吸い上げている。
「ちょっとー、苦いよコレ!」
「あ、ごめん」
何で私は謝ってんだろう。
「だってさー、何でも聞いてって。何でも知ってるからって、そう言ったんだ」
「前任の先生が?」
「うん」
それだけでどうして?と聞くと、
「『授業と関係ない質問をしないで』って怒ってさ!」
その時のことを思い出したせいでなのか、南雲くんの声のトーンが上がり、
「わかんねぇの?って聞いたら『わかる』って言うから、だったら教えてよって言ったのに『今は答える気は無い』とか言ってさー!」
あー、ムカツク!と吐き捨てて、長机の脚をガンっと蹴っ飛ばして、勢いで倒れた私のラテを「うわっ!ごめんっ!」と慌てて立て直した。
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