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いきがっちゃってるのか、真面目なのか。
なんだかよく掴めない。
その頭は何を考えて、その目は何を見てるんだろう。
男の子にしては随分とキメの細かい綺麗なその肌は一体何を感じ取っているんだろう。
そんな純粋な興味で南雲くんが話す続きを大人しく待っていた。
「オレにとって“先生”はね、“知らないことは知らない。あやふやに答えるのはしたくない。ちゃんと調べたいから時間をくれ”ってはっきり言える、そういう人の方が尊敬出来る先生だし、そういう人に教えて欲しいんだよ。
1年の英語の先生もそういうヤツだった。質問は必ず別に時間を割いて答えてくれた。
最初はね、その場で答えないのは解らないからだろうって思ってたら、『練りに練った授業計画を邪魔されるのは心外だ』って理由でさ。
とにかく決めた通りに授業を進めたいやつだったんだ。
でもそいつ、ちゃんとその理由もオレらに話してくれたから信頼出来たよ。
2年もそいつに教えてもらったから、もう他の先生じゃダメだったんだと思う。
でもさ、同じような質問してみてさ、サラッと答えるか、わからなかったとしても『ごめんわからないから後で答えるから』とか、誠実な返答でも出来てりゃ問題はなかったと思うわけ。
ただね、一番はね、自分を『教師』って呼んだんだ時にね、あーこいつじゃ無理、って思ってさー」
「教師、かぁ。私もその表現苦手だな」
「うん。知ってる」
「へ?」
「だって、オレがこういう考えになったのは水嶋センセーのせいだから」
「な?なんで?!」
「ヒントね」
なぞなぞを出す子どもみたいな顔で、机に両肘をついた。
「オレが昔のE→Zを知ってるのはどうしてでしょうか?」
「どこかで聴いたとか、誰かにすすめられたとか?」
「おしいっ」
楽しそうに耳まで赤くして口元を可愛らしい手のひらで押さえて声を殺して笑うと、
「正解は、」
射抜くような視線で私を見て、にっこりと微笑んだ。
「オレの初恋の人がね、聴かせてくれたからだよ。
佐々木中学校2年3組南雲斗弥。
思い出した?センセ?」
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