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のに。
「ところでさ、」
「んー?」
半分こされたサンドイッチを頬張った私は、
「オレの“初恋”のくだりは?」
「んっぐっ、ごほっ」
思いっきりむせた。
「わかりやすっ」
「からかわないの!げほっ」
「くく」
ピーンポーンパーンポーン………
昼休みを終える予鈴が今とても有難かった。
「さ、お昼休み終わり!教室戻ってくださーい」
「んだよー!」
渋々立ち上がり扉まで行くと、
「あ、そうだ」
南雲くんは私に背を向けたまま、
「北村先生と付き合ってんの?」
酷く冷たい声色でそう聞いてきた。
「え?北村先生と?ちょっとやだ。何を言ってる……」
「真面目に聞いてるんだけど」
冷たい、と感じたのは気のせいで、ただの照れ隠しだとわかったのは、
「呼び捨てにされてた。さっきだって、オレが“初恋”って言ったのを聞こえてんのにわざと話題変えてさ」
南雲くんの頭上を、エアコンの風が通り抜け、頭のてっぺんの髪を揺らし、ふちを赤く染めた耳が私には見えてしまったから。
「付き合ってないよ。北村先生は大学の先輩なだけ」
「そ」
「さ、ほら、授業遅れちゃ……」
「あのさ、」
私の言葉を遮るようにガラガラ…と扉を開けると、
「オレ、意外と一途だからね」
廊下から射し込む光が、緩く微笑む南雲くんを縁どった。
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