2時間目

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翌日のお昼休みも南雲くんは特に変わった素振りも見せず準備室にやって来て、自分の部屋のように教材室で時間を潰して帰って行った。 特に用件もないのに、続けざまに一人の生徒を教材室に入れるということに若干の罪悪感があった。 もちろんその罪悪感には、南雲くんが私に対して好意を抱いてくれていることはおおいに関係している。 だから、帰り間際、「勉強するなら来てもいいけど?」と言ってここに来させないようやんわりと伝えてみたのに、ちゃんと、という表現が適切かわからないけど、放課後にやって来た南雲くんは、机にペンケースやノートを広げ、持ってきた問題集に取り組んでから帰って行った。 勤務3日目。 その日は昼休みに南雲くんは来なかった。 放課後も、構えていたけれど来る気配はなかったから、私は、「もし良かったら指導をお願いできないか」と言われていたディベート部へ行くことにした。 私のお給料は授業のコマ数で計算される。 『非常勤講師』と呼ぶと聞こえはいいけど、いわばアルバイトと同じで、部活動の指導分は正直言うとボランティアだ。 けれど、夏にある大会に向けて生徒が頑張っているから、と言われれば、断ることなんて出来なくて、「私で役に立つのなら」という思いで引き受けた。
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