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南雲、という生徒は、どれだけの影響力があるんだろう。
そのたった一言で、クラスのほとんどが真っ直ぐに私の方に身体を向けた。
今も昔も、クラスには必ず一人いるリーダータイプの男子生徒なのかな。
実際には、「自然発生して」教室にいるのではなく、クラス替え等で学校側がそういうタイプの生徒を「配置する」わけだけど。
高校にもなると、進路別にクラスが決められることが多いからなぁ。
今回のシチュエーションではあの生徒は本当に「自然発生した」のかもな。
「先生ー。授業するんですかー?」
生徒の誰かが発したその声に、“初回の授業は、授業をしようとしちゃだめだよ~”というアドバイスをしてくれた、私がこの場にいる原因人物のふにゃふにゃの顔がパッと浮かんだ。
そのつもりなんだけど……と言いかけた私を遮って、数人の生徒からありがちな質問が出始めた。
「先生って何歳?」
「彼氏はいるのー?」
「どこに住んでんのー?」
聞かれると予想していたそれらを、希望的未来予想図にちょっぴりの事実を混じえてどうにか上手く切り抜けていく中、さっきの南雲斗弥という生徒は、その質問には乗っかることもなく、机に頬杖をついてじっとこっちを見ているだけだった。
部活は何もしていないのかな?
ニキビといった思春期の肌トラブルからかけ離れた綺麗な肌は、女子生徒よりも白くてスベスベしてそうだ。
そんな肌に貼り付いている顔のパーツはどれもが中性的なくせに、放つオーラだけはいっちょまえに男っぽくて、なんともギャップのある生徒だ。
他の生徒とは異質な空気纏うその南雲という生徒は、特に楽しそうでもつまらなそうでも無い表情を保ったまま、何も喋ることはなかった。
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