ふたりの宿題

１時間目

新校舎に集められた生徒の教室とは違って、事務室や職員室や教科別の準備室や教材室が設けられた古い校舎は、扉は木枠の引き戸だし、廊下も懐かしい趣のある板張りだ。

だが古いのは見た目だけで。

昔と違い、有難いことにエアコン設備は万全で、６月の頭の蒸し暑くなってくる今の時期には、パソコン等の機器のためにも必要不可欠だ。

英語科の準備室はその校舎の１階の一番奥にあって、授業が終わる度に戻るのさえ面倒になると、当時の担任の先生が言っていたのを今でも覚えている。

私は、この高校の卒業生だ。

今年26だから、もう８年も前になる。

大学を卒業してからは塾講師をしたり、父親の法律事務所でお茶くみをしながらのらりくらりと過ごしていた。

兄が結婚してからは実家に居づらくなって一人暮らしを始めたものの、まともな職に就くことなくバイトで食い繋いでいた。

なんとも複雑この上ない気持ちで、ギシギシと鳴る廊下を歩き、準備室へと戻ると、

他学年を受け持つ先生たちに混ざって私にこの仕事を紹介した張本人が、背もたれを抱えた姿勢で灰色の椅子に座っていた。