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考えると夜も眠れないそうだ。こいつがこんなに肝っ玉が小さい奴だとは思わなかった。
「でも、相手も日曜なら休みだから動きはないんじゃないか?」
「いや、日曜だろうと、ババアは関係ない。毎日、目に見えないそれを見送っている。俺は霊感ゼロだからそういうの見えないからな。」
「まあ、俺は別にいいけど。お前んちの飯を食って、お前んちの酒が飲めるのなら。」
俺がそういうと、和也は、あっという顔になった。
「すまん、食い物はない。」
「えー。マジで?俺腹ペコなんですが。」
「そっか。じゃあ、今から近くのコンビニに行かないか?つまみと酒も買おう。」
和也は今日はよほど俺に泊まってほしいらしい。まあ俺の方も別に彼女とかいないし、暇だからいいけど。
俺と和也は、アパートのドアにカギをかけ、コンビニに向かった。
コンビニに向かう途中、婆さんの部屋のドアが開けっぱなしにされており、何やら、ちゃぶ台を挟んで誰かと楽しそうに談笑している。覗くつもりはなかったが、先ほどまでこの老婆について話していたので自然と中を窺った。
「お、おい、あれ・・・。」
俺は中を見て、そのあとの言葉を失った。
ちょうど玄関からまっすぐ正面に仏壇が見えるのだが、その遺影に驚いた。
「ん?なんだ?」
和也も覗き込んだ。すると和也の顔色が青く変わり、次の瞬間には怒りで真っ赤になっていた。
和也はずかずかと、老婆の部屋に土足で上がり込んだ。
「おい、ふざけんなよ、ババア。なんで俺の写真を遺影にしてるんだ。」
和也はびっくりして腰を抜かしそうな老婆にすごんだ。
俺はあわてて、止めに入った。
「おい、やめろ、和也。相手は年寄りだぞ。」
老婆の胸倉をつかもうとする和也を必死で羽交い絞めした。
「マコト~、マコトや~。助けておくれ~!母さん殺されるよ~。」
マコトと呼びながら視線を送る方向を見ると、なんだか黒いもやもやとした影のようなものが、ちゃぶ台の向こう側で揺れている。
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