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第17章「ヤイとふたりで泥棒?」
ぼくはハッシという村に、ヤイと同居していた。
でも早々に引っ越しすることになった。次の住居を探さなければならない。
その1「新居発見」
やがてヤイは新しい住まいを見つけた。
場所は、ハッシから5キロも離れていない港町アルズー。しかもそこには、フランスから家族を呼ぶという。
ここの大家は人の好い、おおらかな性格だった。現代的感覚をもち、外国人に理解がある。
大家の家族構成は複雑だ。
主人と奥さん、息子ひとりと娘ふたり。それに叔父、めい、おい、いとこ、はとこがいる。11人のビッグファミリーだ。
賃貸契約を交わしたあと、すぐに引っ越しが決まった。
ただしヤイの家族が到着するまで、ぼくもいっしょに住むことになった。
その2「引っ越し」
ぼくらはすばやく転居した。
引っ越しといえば、ふつう週末におこなうもの。だがぼくらは可能とあれば、1日も待ちたくない。
深夜に家財道具をまとめ、音も立てずに出ていった。ハッシの大家のうるさい監視から逃れるためだ。
といっても荷物は、スーツケースと台所用品ぐらい。それでも会社の小さな車に乗せると、2人分の荷物でいっぱいになった。
あとで近くに住んでいた同僚から、こんな話を伝え聞いた。
「近所でうわさになってるぞ。
『真夜中にこっそり荷物を持ち出した。あいつら、まるで泥棒みたいだった』
って。もし同僚だとばれたら、おれも泥棒仲間にされてしまう」
新居のふたりの娘たちは、姉が17歳で妹が13歳。
ひんぱんにぼくらの家にきては、炊事洗濯を献身的にしてくれる。そこは個人主義のフランス人とは違う。
他人の世話を焼く。
外国人への興味なのか、あるいはそうするものだという習慣からか。男ふたりだけで住んでいるなら、世話をするのは当たり前だと思っている。
今回はどうしたことか、ヤイは娘たちに手を出さない。娘たちが若すぎるのか、それとも家族を呼ぶのでトラブルの種をまきたくないのか?
とにかく妙におとなしい。
新居に移ると、ジェミラやファティマも以前ほど訪ねてこなくなった。
大勢の中で暮らすとプライバシーがなくなる。
出入りが自由になってしまう。誰がいつやってきて、いつ帰ったのか、はっきりしなくなる。ハッシでは、大家の家族やヤイの女友だちが勝手に入ってきて、勝手に出ていった。
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