第17章「ヤイとふたりで泥棒?」

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 ぼくは、日本でもそういう例を知っている。  大学のすぐ近くにアパートを借りた友人の部屋は、たまり場になっていた。いろんな人間が立ち代わり入れ代わりやってくる。  友人のプライバシーはなくなった。  ハッシでは、自分と他人の部屋の区別もついてなかった。 大家の家族が押し入れや引き出しを勝手に開ける。そうじや整理をしていた。親切というよりおせっかいだ。  他人の部屋という概念がない。  この新居でのふたりの娘も、最初はそうかなと思っていた。しかし今回は一応けじめがついている。出入りするのは台所と居間に限られている。  プライバシーの概念があるようだ。  そのうち友だちとか親せき、父親がきては帰るようになった。やがてぼくたちも大家の母屋に入りびたるようになった。もちろんぼくらも入るのは、居間だけだ。   その3「アルジェリアの子どもたち」  近所を見ていると、どの家にも多くの子どもたちが出入りしている。  どの子の親が誰なのか、よくわからない。彼らの考えかたの中に、こんなのがあると聞いた。 「子どもは国の宝」 だから自分の子も他人の子も同じようにかわいがり、しかる。以前の日本、1950年代ごろまではそうだったように思う。  あるとき、近所の赤ちゃんを抱かせてもらった。 「日本で抱いたとき、突然泣き出されて困ったんだ」 と1度は断った。けれどその母親は 「いいから、いいから」 と、ぼくの腕に彼女の子を無理矢理渡した。  そこで気づいたのは、アルジェリアの赤ん坊は人見知りをしないってこと。  そのあと何人もの赤ん坊を抱いたが、一様におとなしくニコニコしていた。しかも母親に戻りたがるそぶりも見せない。  イスラムといえば、閉鎖的と思われがちだ。  とくに女性は外出時にベールをまとい、近づきにくいイメージがある。ところがいったん家に入ると、とても開放的で親しみやすい。赤ん坊だって抱かせてくれる。  宗教的タブーにしばられているように見えて、実際は好奇心旺盛だ。大胆な行動も起こす。  とくに外国人に対しては異常に興味をもつ。  何人もの母親が赤ちゃんを抱かせている間、ぼくにいろいろな質問をしてきた。 「最初にアルジェリアにきたとき、どう思いました?」 「アルジェリアのいい点、悪い点を教えてください」 「アルジェリアで好きな料理は何ですか?」
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