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ぼくは、日本でもそういう例を知っている。
大学のすぐ近くにアパートを借りた友人の部屋は、たまり場になっていた。いろんな人間が立ち代わり入れ代わりやってくる。
友人のプライバシーはなくなった。
ハッシでは、自分と他人の部屋の区別もついてなかった。
大家の家族が押し入れや引き出しを勝手に開ける。そうじや整理をしていた。親切というよりおせっかいだ。
他人の部屋という概念がない。
この新居でのふたりの娘も、最初はそうかなと思っていた。しかし今回は一応けじめがついている。出入りするのは台所と居間に限られている。
プライバシーの概念があるようだ。
そのうち友だちとか親せき、父親がきては帰るようになった。やがてぼくたちも大家の母屋に入りびたるようになった。もちろんぼくらも入るのは、居間だけだ。
その3「アルジェリアの子どもたち」
近所を見ていると、どの家にも多くの子どもたちが出入りしている。
どの子の親が誰なのか、よくわからない。彼らの考えかたの中に、こんなのがあると聞いた。
「子どもは国の宝」
だから自分の子も他人の子も同じようにかわいがり、しかる。以前の日本、1950年代ごろまではそうだったように思う。
あるとき、近所の赤ちゃんを抱かせてもらった。
「日本で抱いたとき、突然泣き出されて困ったんだ」
と1度は断った。けれどその母親は
「いいから、いいから」
と、ぼくの腕に彼女の子を無理矢理渡した。
そこで気づいたのは、アルジェリアの赤ん坊は人見知りをしないってこと。
そのあと何人もの赤ん坊を抱いたが、一様におとなしくニコニコしていた。しかも母親に戻りたがるそぶりも見せない。
イスラムといえば、閉鎖的と思われがちだ。
とくに女性は外出時にベールをまとい、近づきにくいイメージがある。ところがいったん家に入ると、とても開放的で親しみやすい。赤ん坊だって抱かせてくれる。
宗教的タブーにしばられているように見えて、実際は好奇心旺盛だ。大胆な行動も起こす。
とくに外国人に対しては異常に興味をもつ。
何人もの母親が赤ちゃんを抱かせている間、ぼくにいろいろな質問をしてきた。
「最初にアルジェリアにきたとき、どう思いました?」
「アルジェリアのいい点、悪い点を教えてください」
「アルジェリアで好きな料理は何ですか?」
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