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その1「フランスの管理職」
この物語にしばしば登場する、ムッシュ・ガリッグ。
フルネームは、マックス・ガリッグという。
彼は今まで会ったどのフランス人とも、違うタイプだった。世界を股にかけたエンジニアとして。石油と共に生きてきた。
オランダのダッチシェルから始まって、名だたる企業を渡り歩いた。
エッソ、トータル、エクソン…。ある会社ではエンジニアだった。別の会社ではプロジェクトマネージャーとして活躍。石油界のマルチプレイヤーだ。
フランスでは、管理職は最初から管理職になるべく教育される。女王バチを育てるようなもんだ。
職につくと、即戦力としての能力を求められる。
ルーキーの甘えは許されない。しかしそれに答えられるような実力があるから、選ばれたともいえる。
その2「ガリッグとフォール」
このトレーニングセンターでの責任者は、ムッシュ・フォール。
まだ若い。ムッシュ・ガリッグの助けが必要だ。実質的には、彼が最高責任者だろう。
しかし彼はいたって謙虚。あくまで裏方に徹しようとしている。この奥ゆかしさ、ぼくと似ているでしょ……。
ムッシュ・フォールが赴任した当初は、慣れないもんだから、相当混乱していたらしい。かなりめちゃくちゃなカリキュラムを組んだ。人員配置もひどかったらしい。
おかげでムッシュ・ガリッグは、彼のフォローに大忙しだった。
ぼくもその混乱の被害にあった。
同じクラスを2度教えるように組まれていた。当然二度目の授業は、何もやることがない。授業は自習時間にした。
ところがそんなときに限って、運悪く検査官が回ってくる。
「おい、授業はどうした? 強制帰国されたいのか!」
「さぼっているわけじゃないんだ。実はカリキュラムが…」
説明するのに、どれだけ苦労したか。結局ムッシュ・フォールは、最後まで何かと問題を起こした。
彼の滞在の終わりのころ。
ついにムッシュ・ガリッグも、本来上司であるムッシュ・フォールにあいそをつかした。
「ムッシュ・ガリッグ、ポケットコンピューターのプログラムを組んでもらえないか?」
彼は、ムッシュ・フォールから仕事を依頼された。しかし彼は、ぼくを呼んだ。
「代わりに仕事をしてくれないか? ギャラははずむから。ただしムッシュ・フォールに黙っておいてくれ」
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