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その量に思わずギョッと身体が反る。
「読み込んでまとめて資料作成頼む。俺はこっちの英文と戦わなきゃならねぇからな」
中村先輩のデスクには英文で書かれた資料の山。
「そっちの方がいいな…」
小さい声で呟くと
「あぁ、浅木はボストンからだっけ」
嬉しそうな中村先輩の声。
「何だそうかそうか」
中村先輩はとっても嬉しそうに私のデスクの資料と交換してくれた。
「英語が出来ないわけじゃないんだぞ」
念を押すように言ってから
「見慣れた文字の方が読みやすいんだよな」
「わかります。日本語は漢字とかあると怯みます。脳内変換どころじゃないんです」
「助け合いが出来そうだな」
「頑張ります」
私は英文の資料を読みはじめた。
見慣れた英文であっても書いてある言葉は専門用語も多く辞書をひく必要もあった。
それでも読むペースは日本文よりも俄然速い。
タイピングも英文の方が当然速いわけでマーカーを引きながら資料をまとめていった。
「おい浅木、資料は日本語で打ってくれ」
「はっ…」
中村先輩の声に動きが止まった。
調子良くタイピングしていたが確かにそうだ。
英文をまとめるというのは意識をしないと日本語に出来ない。
急いでプリンターに飛ばし印刷されたものを見ながら日本語に入力しなおした。
「スピード落ちたな」
横から肩を震わせているみやち。
「しかも1からだ」
私の返答に両側からは大笑いが聞こえた。
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