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大体、黎子さんは元々結婚願望なんて欠片も見せてくれなかったのだ。
近しい人たちが続々と結婚すれば、焦っても当然だと思うんだけど、黎子さんはのんびり祝福するばかりだった。
それどころか、恋人がいない状態が数年続いていたはずなのに、何とも思っていないようだった。
俺としては、多少焦りでもして、手近なところであるところの――つまり俺でさっさと手を打って欲しいと思わないこともなかったんだけど、そんな俺の視線にはちっとも気付いてもらえなかった。
そんな黎子さんだからこそ、言葉を急かされて嬉しかったんだ。
天にも昇る気持ちって、ああいうことを言うんだろう。
あのときの俺は、絶対地上から数センチ浮いてたと思う。完全に浮かれていた。
だから、理想とは程遠いプロポーズになってしまったけれど、その代わりにゆっくりと黎子さんに好きな指輪を選んでもらえるっていうのもなかなか良いと思うんだ。
俺の健気なリサーチによれば、そうするカップルの方が多いらしいしね。
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