第2章 運命

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カチャリと小さく鳴る音に、彼の唇から切り離される。 店主が黒木さんへと、コーヒーをカウンターに置いた。カップは艶のある白色のろくろ焼き。琥珀色が美味しそうに映える。カップと同じ色のソーサーには、ミルクが載せられていた。 私の隣に置くには違和感を感じるそのカップに、大して気にも止めず、黒木さんとの会話に夢中になっていた。 年は私の4つ年上31歳。 職場はここから電車で40分。 営業マンというだけあり、話上手。 ハンカチを返してもらう約束も、互いの都合の良い日を難なく合わせて、スムーズに決まった。場所はこのお店の前で。予約を取るわけではないので、いつだって来られると思った。 でも黒木さんは今日、予約を取っていたようには見えなかったな。 それを聞こうとしたとき、 「もうこんな時間だ、社に戻るよ。雨も止んでる。 秋津さんと話していると、時間が経つのを忘れてしまう。また会えるのが楽しみだよ。 じゃ、また。」 店主をマスターと呼び、お金を払う。まだ乾いていない上着を手に、ここを去って行った。 黒木さんが口にした白いカップを眺め、なんとも言えぬため息を漏らす。 単純に、もっと一緒にいたいと思った。
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