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今さっきまでここにいた黒木さんが、夢じゃないかと思ってしまう。
黒木さんと過ごした少しの時間が、楽しすぎて、嬉しくて。
触れようと思えば触れられる距離にいたのに...。
初対面の人に触れたいと思う自分に気付く。
カチャリ。
店主がコーヒーを置いた。
私のところではなく、向かって左から7番目の席。
そろそろ私も帰ろう。
マスターにお金を払い56円のお釣りをもらう。メニューはないけど値段はある。不思議な数字の並びに少し驚いてから店を出た。
外は雨は降ってはいない。
黒木さんがあれだけびしょ濡れだったのに、地面も濡れていなかった。
たくさんの星が輝いて、丸い月の光に私は照らされて歩いた。
私が去った後、7番目のお客さんの前に置かれたのは、私が使ったカップと同じ柄、青い色のカップ、ということを私は知らない。
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