第2章 運命

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今さっきまでここにいた黒木さんが、夢じゃないかと思ってしまう。 黒木さんと過ごした少しの時間が、楽しすぎて、嬉しくて。 触れようと思えば触れられる距離にいたのに...。 初対面の人に触れたいと思う自分に気付く。 カチャリ。 店主がコーヒーを置いた。 私のところではなく、向かって左から7番目の席。 そろそろ私も帰ろう。 マスターにお金を払い56円のお釣りをもらう。メニューはないけど値段はある。不思議な数字の並びに少し驚いてから店を出た。 外は雨は降ってはいない。 黒木さんがあれだけびしょ濡れだったのに、地面も濡れていなかった。 たくさんの星が輝いて、丸い月の光に私は照らされて歩いた。 私が去った後、7番目のお客さんの前に置かれたのは、私が使ったカップと同じ柄、青い色のカップ、ということを私は知らない。
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