第1章 出会い

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そして、彼女の背を反るような曲線は、こちらから見ても悩ましいもので。 そんな姿勢で見上げられ体を寄せているのだから、キスをしたくなるのは男性としては当然の心理だろう。 でも女性は、駆け引きかのように顔と顔との空間を楽しんでいるようだった。 恐ろしく蠱惑的な女性だと思った。 見ているこっちも、もどかしいくらいに。 男性は、たまらないというように、ノースリーブの彼女の肩にキスを落とす。 キスの音は2回、聞こえてきた。 尚も、愛しげに女性を見つめる男性。 ...ッ、もう! そんなところでやめてほしい。 2人の空気にあてられて、拒否反応が出そうだった、そのとき。 「秋津さま、秋津さま。」 このお店の店主との思われる男性が、2人の男女の奥から私に声をかけた。 店主の声に、男女が漂わせる不埒な空気から我に返る。 「はい。秋津です。」 店主に会釈をした後、2人の邪魔にならないよう男性の後ろをそっと通り抜ける。男性は入り口の横の円柱の柱に、女性を囲むように追い込んでいた。 彼の気持ちは、分からなくもない。
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