第1章 出会い

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それにしてもこの2人、このお店で運命によって巡り会えた2人なのだろうか。 ここに入店できるお客さんは、限られていると聞いた。まるでお店が人を選んでいるかのように。予約の電話もなかなか繋がらない。運良く繋がって予約が取れたとしても、ここへ来るまでに本人の不都合が何か起き、なかなかお店まで辿りつけないのだという。例えば、電車が動かなくなったとか、外せない用事が予約日に入ってしまったとか。 同僚の麻実から聞いたとき、正直いって、怖かった。 でも麻実が〝予約できないかもしれないし〟と。その言葉で、どうせ繋がらないからかけてみよう、と全く本気で運命の人を求めていない私が電話し、このお店まで辿りついてしまったのだ。 電話予約がとれたとき、麻実にはとても羨ましがられた。だから、私と変わってもらおうとしたのに、やはり麻実ではお店側が都合が悪いのだろう。麻実には街コンの予定が入っていた。前の街コンで出会った、お目当の人が参加するのだという。 運命の人より目先の出会いに賭けるところが、彼氏ができるコツを知っているというか.....麻実らしい。 そんな麻実は、会社で唯一私の秘密を知っていた。 それは、私に今まで彼氏がいたことがない、という秘密。
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