第2章 運命

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ドカドカと足音が近づいてくる。 さっきの男女がまだ身を寄せ合っているかもしれないのに、お構いなしといった様子。 足音の主はカウンター席まで来ると、 「雨宿りさせてください。外は凄い雨で。」 なんとも心地良い声色だった。その声色に胸が高鳴る。 失礼だとは思いつつ、振り返って彼の姿を見た。 ハンカチで濡れたスーツを拭いてはいるが、十分に雨を吸ったハンカチでは拭いきれていない。 私は思わずバッグからハンカチを取り差し出した。 「これも、使ってください。」 恋愛初心者とも言える私が、プライベートで男性に声をかけるなんて滅多にない。 最早どうでもよくなっていた目的が、私へと舞い戻る。 「ありがとう。」 一瞬驚いた表情の彼は、笑顔でハンカチを受け取った。 雨に濡れた髪から覗く彼の光る瞳に、私の全てが射止められる。 占いもカウンセリングも必要ない。 彼の笑顔に、一目で恋に落ちた。
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