第1章

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その奇妙な店は、商店街の片隅に建つ雑居ビルの3階にあった。 雑居ビルの扉を開け、中に足を踏み入れる。 扉の直ぐ右側に郵便受けが8つ、左側に管理人室と書かれたプレートが貼られたドアがあった。 ドアの横にある小窓から中を覗く、人はおらず、ビルの所有者が物置として使っているのか、管理人室の中には乱雑に物が積み上げられている。 扉から奥に向かって通路が伸びており、右側にドアが2つ、どちらの部屋からも物音は聞こえてこない。 さらにその奥、故障中と書かれた紙が貼られたエレベーター、エレベーターの脇に階段。 階段を上る。 2階は通路の右側にドアが2つ、左側に1つ、左側のドアの脇に探偵事務所の看板が打ちつけてあって、中から人の話し声が漏れ聞こえていた。 さらに階段を上がり3階に向かう。 3階の踊り場で足を止め周りを見渡した。 この上に屋上でもあるのか、階段はさらに上に向かって続いている。 3階も2階と同じ間取りで、右側にドアが2つ左側に1つあった。 私に声をかけてくれた女性に渡された、此処の場所が書かれた紙をもう一度見て確認し、看板の類いが全く見当たらない左側のドアを、ノックしてから開ける。 入って直ぐ前に衝立があり、部屋の中は見渡せない。 衝立の奥に向けて声をかける。 「こんにちは。 どなたかいらっしゃいますか?」 声をかけた事で、部屋の主が私に気が付いたらしく、奥から返事が帰って来た。 「あ! お客さんだ。 どうぞ中にお入りください」 衝立を回り込み部屋の奥に足を踏み入れる。
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